マジックT型導波管の高周波電磁界解析事例
衛星通信の送受信システムやマイクロ波地上通信システムで利用される電磁波回路は、各種導波管で構成されています。
これら導波管の中から今回はマジック T型導波管について、高周波電磁界解析ソフトウェア F-WAVEで評価解析しました。
マジックT型導波管は、分岐が電界面に平行に出るE面T分岐導波管と磁界面に平行にでるH面T分岐導波管を組み合わせた導波管です。
マジック T 型導波管の概念図は図1、2の通りです。
図1 マジックT型導波管概念図 |
図2 マジックT型導波管断面図 |
マジックT型導波管は、4つの端子を持つ4開口素子のひとつです。
E面T分岐導波管とH面T分岐導波管が組み合わされた構造になっています。
マイクロ波をマジックT型導波管のポート1からTE10モードで入力すると、ポート3とポート4には同相で等電力に分配されます。
ポート2に向かうマイクロ波は、伝播方向に電界が向いたTMモードになります。
しかし、TE10モード用の導波管ではTMモードがカットオフとなり、伝播できません。
したがって、ポート2にはマイクロ波は現れません。
次に、ポート2からTE10モードで入力すると、ポート3とポート4には互いに逆相で分配されます。
この時、ポート1は左右対称なモード、TE20モードで励振されますが、TE20モードでは同様にカットオフとなり、伝播しません。
逆に、ポート3とポート4から同相のマイクロ波を入力すると、ポート1にはそれらが合成されて出力されます。
しかし、ポート2には出力されません。
また、ポート3とポート4から互いに逆相のマイクロ波を入力すると、ポート2にはそれらが合成されて出力されます。
しかし、ポート1には出力されません。
マジックT型導波管は、このような性質を利用して、マイクロ波の分配および合成に利用されます。
以下のような条件で、各ポートに [ 5GHz ] [ 1W 相当 ] のTE10波を入力しました。
CASE1 ポート1にTE10入力
CASE2 ポート2にTE10入力
CASE3 ポート3と4にTE10入力(振幅が等しく同相)
CASE4 ポート3と4にTE10入力(振幅が等しく逆相)
解析結果をまとめると、各CASEのポートの入出力電力値は以下のようになりました。
ポート1 | ポート2 | ポート3 | ポート4 | |
---|---|---|---|---|
CASE1 | 入 力 | 1.0914 x 10-7 | 0.5000 | 0.5000 |
CASE2 | 2.3864 x 10-7 | 入 力 | 0.5000 | 0.5000 |
CASE3(1) | 2.000 | 1.4264 x 10-7 | 入 力 | 1.000 |
CASE3(2) | 2.000 | 1.4264 x 10-7 | 1.000 | 入 力 |
CASE4(1) | 3.9544 x 10-7 | 2.000 | 入 力 | 1.000 |
CASE4(2) | 3.9544 x 10-7 | 2.000 | 1.000 | 入力(逆相) |
図3 各ポートの出力電力値 (単位:W)
CASE1の電界分布は、実部が図4~5、虚部が図6~7のようになります。
今回は周波数応答解析を行っていますので、実部は t = 0(入力と同相)の場合の分布、虚部は t = -T/4の分布を表しています。
CASE1の場合、ポート1から入力された電界に対してE面T分岐導波管として機能し、ポート3とポート4に同相で等電力に分配されている状態がわかります。
また、ポート2に対して、伝播方向に電界が向いたTMモードになり、ポート2にはマイクロ波が伝搬されない状態が確認できます。
図4 CASE1:電界コンター図 (実部) | 図5 CASE1:電界ベクトル線図 (実部) |
図6 CASE1:電界コンター図 (虚部) | 図7 CASE1:電界ベクトル線図 (虚部) |
CASE2の電界分布は、実部が図8~9、虚部が図10~11のようになります。
ポート2から入力すると、ポート3とポート4に互いに逆相で分配されている状態が確認できます。
またこの時、ポート1はカットオフとなり、伝播されていないことがわかります。
図8 CASE2:電界コンター図 (実部) | 図9 CASE2:電界ベクトル線図 (実部) |
図10 CASE2:電界コンター図 (虚部) | 図11 CASE2:電界ベクトル線図 (虚部) |
CASE3の電界分布は、実部が図12~13、虚部が図14~15のようになります。
ポート3とポート4から同相のマイクロ波を入力すると、ポート1にはそれらが合成されて出力されますが、ポート2には出力されません。
図12~15で、それらの状態を確認することができます。
図12 CASE3:電界コンター図 (実部) | 図13 CASE3:電界ベクトル線図 (実部) |
図14 CASE3:電界コンター図 (虚部) | 図15 CASE3:電界ベクトル線図 (虚部) |
CASE4の電界分布は、実部が図16~17、虚部が図18~19のようになります。
CASE4とは逆に、ポート3とポート4から互いに逆相のマイクロ波を入力すると、ポート2
には合成されて出力されますが、ポート1には出力されません。
図12~15で、それらの状態を確認することができます。CASE3の電界分布は、実部が図12~13、虚部が図14~15のようになります。
ポート3とポート4から同相のマイクロ波を入力すると、ポート1にはそれらが合成されて出力されますが、ポート2には出力されません。
図12~15で、それらの状態を確認することができます。
図16 CASE4:電界コンター図 (実部) | 図17 CASE4:電界ベクトル線図 (実部) |
図18 CASE4:電界コンター図 (虚部) | 図19 CASE4:電界ベクトル線図 (虚部) |
CASE1およびCASE2の電界分布の時間的な変化をアニメーション化すると、図20および図21のようになります。
図20 電界のアニメーション図 (CASE1) |
図21 電界のアニメーション図 (CASE2) |
以上のように、導波管内の伝搬シミュレーションを行うことにより、Sパラメータによる導波管を通過する電力量を比較したり、入射波と反射波の位相を評価したりすることができます。
この解析事例につきましては、次の動画でご覧いただけます。
この評価解析は高周波電磁界解析ソフトウェア F-WAVE で行いました。
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