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誘導加熱解析

誘導加熱は「ファラデーの電磁誘導の法則」の応用で、磁界解析では発熱密度が、熱伝導解析と熱応力解析の連成解析(マルチフィジックス解析)では温度、熱応力まで求めることができます。

誘導加熱の原理

誘導加熱装置の身近な例としては、電磁調理器(IH調理器)などがあります。

この誘導加熱装置を最適に設計するためには、その発熱現象が起こるプロセスを解析(シミュレーション)ソフトウェアで確認しながら行うと便利です。シミュレーションでは、加熱コイルなどの装置の形状寸法を自由自在に設定し、結果起こる現象を可視化により確認できますので、最適な設計を行なうことができます。

誘導加熱解析では、まず発熱密度分布を求めます。
磁界解析ソフトウェア[ F-MAG ]の周波数応答解析機能を使用します。

磁界解析ソフトウェア[ F-MAG ]につきましてはこちらへ

解析は下図のように、[ 比透磁率 ]と[ 電気伝導率 ]を定義し、さらに周波数を設定して行います。
周波数は通常、商用電源の50/60Hz~500kHz程度です。

ここでこの[ F-MAG ] による誘導加熱解析の一例を紹介します。
下図のような誘導加熱装置を想定します。
この誘導加熱シミュレーションでは、装置部材の形状寸法を自在に設定し、生じる現象を可視化できます。

誘導加熱装置例 (誘導加熱/熱伝導/熱応力連成解析)

誘導加熱装置例 (誘導加熱/熱伝導/熱応力連成解析)

このモデルは軸対称ですので、先ず下図のような2次元軸対称モデルの解析を試みます。
ソリッドモデルを読み込み、形状選択画面で[2次元軸対称モデル]を選択します。
そして、物性定義、メッシュモデル作成、荷重と境界条件の設定、計算と、タブの順に操作します。

最初にコイルに直流電流を印加すると、周囲には以下の理論式に基づく磁束密度分布が生じます。

𝐻 = 𝑛𝐼   H:表皮層の厚さ(m) n:コイルの巻数 I:コイルの電流値(A)

𝐵 = μH  B:磁束密度(T) μ:真空の透磁率 H:磁界強度(A/m)

今回は「外層材」のみ磁性体ですので、下図のように「外層材」の磁束密度が高まります。

磁束密度分布 (単位:T)

次にコイルに交流電流を印加しその周波数を高くすると(今回は50KHz)、磁束が磁性体の表面に集中します。
これは表皮効果と呼ばれ、その厚さ(表皮層)は表面から渦電流が1/eに減少する距離になります。
式で表すと以下の様になります。

  δ:表皮層の厚さ(m) σ:電気伝導率(S/m) μ:透磁率 f:周波数(Hz)

今回の表皮層の厚さは、約100μmになります。

磁束密度分布

磁束密度分布 (単位:T)

また、周囲には誘導起電力(逆起電力)が発生し、近傍の導体内部には渦電流が生じます。。

  V:誘導起電力(V) N:コイルの巻数 Φ:磁束(Wb)
渦電流密度分布

渦電流密度分布 (単位:A/m2)

各部材に渦電流が流れると、発熱します。
発熱密度は渦電流の二乗に比例し、電気伝導率に反比例します。

𝑾= J2 /S    𝑾 :発熱密度(W/m3) J:渦電流密度(A/m2) S:電気伝導率(S/m)

発熱密度分布

発熱密度分布 (単位:W/m3)

次に、3次元誘導加熱解析を行ないます。
同じ形状のソリッドモデルを読み込み、形状選択画面で[3次元フルモデル]を選択します。
そして、2次元軸対称モデルでの解析手順と同じように、タブの順に操作します。

形状選択画面 (F-MAG)

形状選択画面
磁束密度分布コンター図<br>(背面材/単位:T/F-MAG)

磁束密度分布コンター図
(外層材/単位:T)

渦電流密度分布コンター図 (背面材/単位:A/m2/F-MAG)

渦電流密度分布コンター図
(外層材/単位:A/m2)
発熱密度分布コンター図 (背面材/単位:W/m3/F-MAG)

発熱密度分布コンター図
(外層材/単位:W/m3)

ここまで[ F-MAG ]の周波数応答解析による渦電流解析(渦流損解析)で、発熱密度分布まで求めました。

次にこの発熱密度分布を利用して、時間とともに変化する温度分布、熱応力分布まで求めます。
そのためには、誘導加熱連成解析が必要になります。

誘導加熱連成解析には、弱連成解析と強連成解析があります。

連成解析につきましてはこちらへ

弱連成解析:最初の磁界解析で得られた発熱密度分布データで最後の時刻ステップまで熱伝導解析を行ないます。

強連成解析:各時刻ステップで熱伝導解析で求めた温度分布と比透磁率または電気伝導率の温度依存性を照合し、必要な場合それらの物性を更新して再度磁界解析を行います。このようにして動磁界解析と熱伝導解析を繰り返し行ないます。
誘導加熱強連成解析は、温度と物性を関連づけながら行ないますので、この操作性の良し悪しが大きなポイントとなります。

この弱連成解析と強連成解析には、それぞれ以下の製品が対応しています。

誘導加熱弱連成連成解析ソフトウェア F-MAG with Nastran

誘導加熱弱連成解析ソフトウェア F-MAG with Nastranはこちらへ

誘導加熱連成解析ソフトウェア F-MAG-IH

誘導加熱強連成解析ソフトウェア F-MAG-IHはこちらへ

誘導加熱強連成解析は、温度と物性を関連づけながら行ないますので、この操作性の良し悪しが大きなポイントとなります。

シミュレーションでは、装置部材の形状寸法を自在に設定し、生じる現象を可視化できます。
したがって、実験試作では計測できなかった箇所の温度分布も把握できます。

ここで、誘導加熱弱連成解析ソフトウェア F-MAG with Nastran による解析事例を紹介します。

先ほど求めた発熱密度データを基に熱伝導解析を行ない、温度分布とそれに基づく熱応力を求めます。

[ F-MAG with Nastran]は、 [ F-MAG ]の中に、[ Simcenter Femap with Nastran ]が含まれていますので、効率良く連成解析操作を行なうことができます。

また [ Simcenter Femap with Nastran ]は、物体表面の自然対流による放熱を考慮できますので、時間とともに変化する解析対象物の正確な温度変化を解析することができます。 下のグラフは解析対象物の上面、下面、側面の温度と熱伝達率の関係を示しており、温度依存性を考慮できます。

自然対流境界条件

以上のようなステップで、[F-MAG ]で求めた、渦電流のジュール損発熱(誘導発熱)から、熱伝導解析を行ない、温度分布を求めます。
最後に温度分布に基づく熱応力解析を行ない、応力分布を求めます。

 温度分布コンター図 (背面材と銅/単位:℃/NX Nastran)

温度分布コンター図
(内層と銅/単位:℃)
 変位分布コンター図 (背面材と銅/単位:mm/NX Nastran)

変位分布コンター図
(内層と銅/単位:mm)

誘導加熱では、被加熱物の温度が数百℃から1000℃以上になり、被加熱物の透磁率、電気伝導率、熱伝導率、比熱などの物性に温度依存性が出てきます。
被加熱物の透磁率、電気伝導率に温度依存性がある場合には、温度分布計算後にそれらの物性を変更するかどうか確認が必要になります。
それらをどのように考慮するかで連成解析の精度が決まります。

[連成解析]につきましてはこちらへ

電気伝導率の温度依存性  物性の温度依存性

物性の温度依存性につきましてはこちらへ

この作業の自動化を図り、簡単に強連成解析ができる環境を実現しました。
熱伝導解析の結果と磁界解析側の物性を各時刻ステップごとに照合し、磁界解析を再度行なうかどうかを判定しながら、最後の時刻ステップまで動磁界解析と熱伝導解析を繰り返し行ないます。

[ F-MAG-IH ]は温度計算を行う毎に物性の変更が必要かどうか確認し、必要があれば自動的に変更して計算を続けます (強連成解析機能)。

F-MAG-IH
誘導加熱解析ソフトウェア[ F-MAG-IH

誘導加熱解析ソフトウェア[ F-MAG-IH ]
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