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電磁気学入門

電場の発生

電荷の受ける力によって、電場や磁場の存在を知ることができることと、これらの力によって電場や磁場を定量的に測定できることを前回示しました。

それでは、このような電場や磁場はどのようにしてできるのでしょうか。今回は、電場がどのように作られるかを見ていきます。

今、二つの電荷のみが存在する空間について考えます。
実際の空間にはいろいろなものが存在しますので、このような空間を想定できないというのであれば、着目している二つの電荷に影響を及ぼすものが充分遠くに離れ ている、と考えてもかまいません。
どちらの電荷も互いに静止しているとします。 この時、この二つの電荷は互いに力を及ぼしあうことが経験的にわかっています。

ひとつの電荷に着目しますと、静止している状態で力を受けるわけですから、その電荷のある場所に電場が存在することが分かります。
この空間には二つの電荷しかないわけですからこの空間には二つの電荷によって、作られたものであると考えることができます。

このことは、どちらの電荷についても同じようにいえますので、この二つの電荷は、どちらも電場を発生させていることがわかります。

電荷が電場を作ることは、次のように考えてもわかります。
電荷が電場によって力を受けることは、作用反作用の法則よりこの電荷が逆に電場の発生源に対して力を及ぼすことになります。

この電場の発生源が受ける力とはどのような力でしょうか。

接触力でないことは明らかです。なぜなら、電荷は他の物体と接触しなくても力を受けることができるので、接触力によって反作用を与えることができないからです。

また、重力でもありません。この力が磁場による力と考えるのが妥当です。
さらに、この力が磁場によるものでないことも簡単に示すことができます。

ローレンツ力より、電場が電荷に及ぼす力は電荷の運動によらないわけですが、このことはこの電荷と電場の発生源との相対速度によっては電荷の受ける力も、その反作用である電場の発生源が受ける力も変化しないことになります。

一方、磁場による力は電荷の運動によって変化しますので、電場の発生源の受ける力は電場によるものとなります。

一方、磁場による力は電荷の運動によって変化しますので、電場の発生源の受ける力は電場によるものとなります。

それでは、電荷の作る電場を定量的に表現することを考えます。これに関しては、経験的な事実をまとめたクーロンの法則があります。もともとクーロンの法則は、電荷どうしに働くカに関して得られたものですが、ここでは電荷の作る電場についての法則として表現します。
1クーロンの電荷が1メートル離れた場所に作る電場の大きさは、

8.987551787 x 109 ( N / C )

となります。ここで、( N / C ) つまり、ニュートン/クーロンはあまり使わない単位なので、電場の単位としてボルト/メートル、 ( V / m )を今後使います。

この単位は ( N / C ) と同じで、

1 ( V / m) = 1 ( N / C )

となります。
すなわち、1クーロンの電荷が電場から力を受けたとき、その大きさが1ニュートンになる場合、その電場の強さが1 ( V / m) となるわけです。

クーロンの法則では電荷の作る電場の大きさは、電荷の大きさに比例し、電荷からの距離の平方に逆比例し、電場の方向は電荷からその電場の作られた点に向いた方向となります。

したがって、大きさ Q の電荷が r メートル離れた場所に作る電場は、次のようになります。

電場 式  ----- (1)

ここに、ベクトル r は電荷のある場所を原点としたときの電場の観測点までの位置ベクトルです。
これより、電荷 Q が正の値を持てば電荷から放射状に外向の電場が作られ、電荷 Q が負の値を持てば電荷の方向を向いた電場が作られること が分かります。

この式を後から便利なように、ここで次のように書き換えておきます。

電場 式  ----- (2)

ここで、

式( V / m)   ----- (3)

であり、真空の誘電率と呼びます。
ただし、ここでをε0 導入したのはあくまで便宜的なことで、これが、なぜ真空の誘電率であるかなど、今のところ考える必要がありません。

また、ε0 はコンデンサーの静電容量の単位であるファラッド ( F )

1 ( F ) = 1 ( C / V )

を使うと、

ε0 = 8.854187818 X 10-12 ( F / m )

となります。

この法則によると、1クーロンという電荷は非常に大きな電場を発生させることが分かります。
例えば、1クーロンの電荷から1メートル離れた場所に1クーロンの 電荷を置けば、この電荷に働く力 F は

F = 8.987551787 x 109 (N)
= 9.17097121 x 108 (KgW)

すなわち、約90万トンとなります。

このことから、私たちの身近にある電荷は、1クーロンよりはるかに小さなもので あることがわかります。
また、電流1アンペアは、1秒間に1クーロンの電荷を運ん でいるわけですが、こちらはそれほど大きな電流ではなく、身近に接することができます。

ここでこの法則をもう少し違った表現に書き換えます。
ここでいくつかの電荷を含んだ空間領域 V を考えます。この空間の境界面を S とすれば次の関係が成立します。

式 ----- (4)

ここに、n は曲面 S の単位法線ベクトルで、領域 V から外向きの方向に とっています。
この関係が成立することは、次のようにして示すことができます。
一つの電荷 Q が曲面 Sのある微小領域 ΔSに作る電場に着目します。ΔS内では 電場は一定であると考えることができますので、この面上での積分は次のように書くことができます。

式

ここに、E は電場 E の大きさ、θ は電場の方向と法線ベクトル n とのなす角です。
今、電荷 Qからここの微小面ΔSを見たときの立体角をΔΩと書けば、

式

が成立することが分かりますので、この関係と(2)式を使って上の積分を書き 直すと、

式

となります。これは、この積分が面の向きや電荷からの距離とは関係なく立方角 ΔΩ のみによって表わすことができることを示しています。
したがって、面積分を領域 V を取り囲む面 Sについて行えば、

式

が成立します。
これは一つの電荷について成り立つ関係ですが、複数の電荷がある場合の電場は、各電荷が独立に存在するときの電場を単純に足し合わせたものとなりますから、これより(4)式が成立することになります。
ここでガウスの発散定理を使って(4)式の左辺を変形すると次のようになります。

式

一方、この式の右辺は電荷密度を ρ とおけば、

式

となるので、次の積分方程式が成立します。

式

この方程式は任意の領域 V について成り立ちますので、次の微分方程式が得られます。

式 ----- (5)

今まで電場は電荷が作るといってきましたが、電場を作るのは電荷だけではありません。
ファラデーの電磁誘導の法則によると、変化する磁場が電場を発生させることが分かります。
この法則を説明するために磁束という量を導入します。

ファラデーは電場や磁場を表すために電気力線や磁力線という概念を導入しました。
これは電場や磁場を線で表し、その線の方向が電場や磁場の方向を示し、面を貫く 線の密度で場の大きさを表現したものです。ここである閉曲面 Sを考えます。この面を貫く磁力線の総数を磁束と呼びます。

ファラデーの法則はこの磁束が時間的に変化すればその面を取り囲むように起電力が発生することを示しています。
この法則をもう少し定量的に表現するために磁束 Φ を次のように書きます。

式 ----- (6)

ここに、n は曲面 S の単位法線ベクトルです。また、この面の周囲の起電力 V、この面の境界である 閉曲線 l についての電場の周囲積分として次のように表すことができます。

式 ----- (7)

ただし、dl は、曲線 l の方向にとった線素です。
これらの量を使うとファラデーの法則は次のように表現されます。

式 ----- (8)

これを電場と磁場の関係で書くと、(6)、(7)式より、

式 ----- (9)

となります。この式は磁場の時間的変化によって、電場が発生することを示しています。ここで、ベクトル解析の関係を使ってこの式の左辺を次のように書き直します。

式

これを使って(7)式を変形すれば、次のようになります。

式

閉曲面 Sは時間的に変化しないと考えているので、この式は次のように変形できます。

式

この式、つまりファラデーの法則はどのような閉曲面に対しても成り立ちますので、結局、次のような微分方程式が成立します。

式 ----- (10)

この式は、磁場が時間的に変化するとその周りに回転電場が発生することを示しています。

今回は、電場が何によって生じるかということについて考え、電荷によるもの、すなわち(5)式と、磁場の時間的な変化によるもの、すなわち(10)式があることが分かりました。

電場の原因は、この二つの場合ですべて表すことができます。

次回は、磁場がどのように作られるかについて議論したいと思います。

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