ここで電気的に中性な物体が電磁場の中に置かれた場合を考えます。
この時、この物体が電磁場から受ける力は(17)式より次のようになります。
電気的に中性な物体が電磁力を受けるのはおかしなことのように思われますが、通常の物体は莫大な数の原子から構成されており、これらの原子はプラスの電荷を持った原子核と、マイナスの電荷を持った電子からできていることはよく知られています。
したがって、全体としては中性であってもミクロに考えると電磁場によって複雑な影響を受け、その結果、全体として電磁力を受けることがあるのです。
今、このような物体として高周波回路やアンテナを考えますと、電磁波の吸収や放出により電磁場から何らかの力を受けると考えられます。
この時(17)式の右辺第二項はゼロと考えることができます。なぜなら、積分領域 V は十分大きくとることができ、境界 S はいま考えている物体から十分遠方であると考えることができるからです。
この物体が電磁波を放出または吸収した影響は、光速以上の速さで伝わることができないので、境界S上の積分はこの時点でゼロでなければなりません。
したがって、この式の右辺第二項の積分は、物体が電磁波の吸収や放出によって受ける力として考えることはできません。これより物体の受ける力は、
・・・ (24)
となります。
電磁波の放出や吸収が時刻 t 1 から t 2 の間におこったとしますと、物体の得た運動量⊿Pは次のようになります。
・・・ (25)
t 1 以前または t 2 以降は物体は、電磁場より力を受けないと考えられますので、(24)式より、
・・・ (26)
が成立します。したがって、この期間
・・・ (27)
は一定に保たれることになります。(25)式、(27)式より、
・・・ (28)
となります。
この式は PEMを電磁波の運動量と考えれば、物体と電磁場を含めた全体としての運動量保存則が成立することを示しています。
また(26)式より、物体と電磁波の間にやり取りがない場合は電磁波の運動量は単独で保存することが分かります。
これより電磁場は真空中で単位体積あたり、
・・・ (29)
の運動量を持っていると考えることができます。ここに c は真空中の光速です。
一方、電磁波のエネルギーの流れは(22)式より単位時間単位面積当たり、
ですから、単位体積当たりのエネルギー u は次のようになります。
・・・ (30)
これより、電磁波のエネルギーと運動量の大きさ p は
・・・ (31)
の関係を持つことになります。