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静解析モジュール (F-MAG-ST) 適用例
連成 有限要素法 周波数応答 過渡応答

誘導加熱炉の連成解析

交流電源に接続されたコイルの中に金属等の導体を置くと、コイルと導体は離れているにもかかわらず導体の表面が発熱します。
これは電磁誘導現象による表皮効果で、導体の表面付近に高密度の渦状の電流(渦電流)が発生し、そのジュール熱で導体の表面が発熱したからです。

誘導加熱炉はこの現象を応用したもので、被加熱物を内部から直接発熱させるため、熱伝導による加熱に比べ、素早く効率良く加熱できます。

今回は下図のような誘導加熱炉を想定し、渦電流による発熱と熱伝導の現象を、誘導加熱連成解析ソフトウェア F-MAG-IHで評価解析しました。

誘導加熱炉

誘導加熱炉

誘導加熱シミュレーションでは、装置部材の形状寸法を自在に設定し、生じる現象を可視化できます。

最初にコイルに直流電流を印加すると、周囲には以下の理論式に基づく磁束密度分布が生じます。

𝐻 = 𝑛𝐼   H:磁界強度(A/m) n:コイルの巻数/m I:コイルの電流値(A)

𝐵 = μH  B:磁束密度(T) μ:真空の透磁率 H:磁界強度(A/m)

今回は「外層材」のみ磁性体ですので、下図のように「外層材」の磁束密度が高まります。

磁束密度分布 (単位:T)

次にコイルに交流電流を印加しその周波数を高くすると(今回は50KHz)、磁束が磁性体の表面に集中します。
これは表皮効果と呼ばれ、その厚さ(表皮層)は表面から渦電流が1/eに減少する距離になります。
式で表すと以下の様になります。

  δ:表皮層の厚さ(m) σ:電気伝導率(S/m) μ:透磁率 f:周波数(Hz)

今回の表皮層の厚さは、約100μmになります。

磁束密度分布

磁束密度分布 (単位:T)

また、周囲には誘導起電力(逆起電力)が発生し、近傍の導体内部には渦電流が生じます。。

  V:誘導起電力(V) N:コイルの巻数 Φ:磁束(Wb)
渦電流密度分布

渦電流密度分布 (単位:A/m2)

各部材に渦電流が流れると、発熱します。
発熱密度は渦電流の二乗に比例し、電気伝導率に反比例します。

𝑾= J2 /S    𝑾 :発熱密度(W/m3) J:渦電流密度(A/m2) S:電気伝導率(S/m)

発熱密度分布

発熱密度分布 (単位:W/m3)

次に、3次元誘導加熱解析を行ないます。
同じ形状のソリッドモデルを読み込み、形状選択画面で[3次元フルモデル]を選択します。
そして、2次元軸対称モデルでの解析手順と同じように、タブの順に操作します。

形状選択画面 (F-MAG)

形状選択画面
磁束密度分布コンター図<br>(背面材/単位:T/F-MAG)

磁束密度分布コンター図
(外層材/単位:T)

渦電流密度分布コンター図 (背面材/単位:A/m2/F-MAG)

渦電流密度分布コンター図
(外層材/単位:A/m2)
発熱密度分布コンター図 (背面材/単位:W/m3/F-MAG)

発熱密度分布コンター図
(外層材/単位:W/m3)

ここまで[ F-MAG-IH ]の周波数応答解析による渦電流解析(渦流損解析)で、発熱密度分布まで求めました。

次にこの発熱密度分布を利用して、時間とともに変化する温度分布を求めます。
そのためには、誘導加熱連成解析が必要になります。

誘導加熱連成解析には、弱連成解析と強連成解析があります。

連成解析につきましてはこちらへ

誘導加熱解析ソフトウェア F-MAG-IH 弱連成解析:最初の磁界解析で得られた発熱密度分布データで最後の時刻ステップまで熱伝導解析を行ないます。

強連成解析:各時刻ステップで熱伝導解析で求めた温度分布と比透磁率または電気伝導率の温度依存性を照合し、必要な場合それらの物性を更新して再度磁界解析を行います。このようにして動磁界解析と熱伝導解析を繰り返し行ないます。

この作業の自動化を図り、簡単に強連成解析ができる環境を実現しました。
熱伝導解析の結果と磁界解析側の物性を各時刻ステップごとに照合し、磁界解析を再度行なうかどうかを判定しながら、最後の時刻ステップまで動磁界解析と熱伝導解析を繰り返し行ないます。

誘導加熱強連成解析は、温度と物性を関連づけながら行ないますので、この操作性の良し悪しが大きなポイントとなります。

誘導加熱解析ソフトウェア F-MAG-IH

誘導加熱では、被加熱物の温度が数百℃から1000℃以上になり、被加熱物の透磁率、電気伝導率、熱伝導率、比熱などの物性に温度依存性が出てきます。
被加熱物の透磁率、電気伝導率に温度依存性がある場合には、温度分布計算後にそれらの物性を変更するかどうか確認が必要になります。
それらをどのように考慮するかで連成解析の精度が決まります。

[連成解析]につきましてはこちらへ

電気伝導率の温度依存性  物性の温度依存性

物性の温度依存性につきましてはこちらへ

誘導加熱連成解析の結果、温度分布は下図のようになりました。

温度分布コンター図 (背面材と銅/単位:℃/NX Nastran)

温度分布コンター図 (内層と銅/単位:℃)

この評価解析は誘導加熱連成解析ソフトウェア F-MAG-IH で行いました。

F-MAG-IH につきましてこちらへ

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